ここはどこなのでしょうか?私はいったいいつまでこのままなのでしょうか。周りもほとんど見えない真っ暗な中、どのくらい月日がたったのでしょうか。月日ぐらいでは済んでいないですね。何十年、何百年たったのでしょうか。ことの始まりはアスビモとかいう輩がぼ……ではなくゼド様の元を頻繁に出入りするようになってから。最初はさほど気にはしていませんでしたが、出入りを重ねるたびにゼド様の様子が変わっていったのです。流石に看過できないと思い、ゼド様に進言をしたく、ご面会をお願いしました。ゼド様は快く面会を受けてくださり、その時に私は進言をしました。『近頃出入りしているアスビモのことです。 あまり相手にされない方がいいのではないでしょうか? ゼド様の様子も以前に比べると変わってきたように思います』『余の様子が変わっただって? 余は何も変わってないぞ。 アスビモも特に必要な取引をしているだけだ。 お前が気にするようなことは何もない』ゼド様はそうおっしゃって、私の進言は受け入れていただけませんでした。『ゼド様がそうおっしゃるなら…… 私の杞憂であれば問題ございません』『そうだな。 お前が考えすぎているだけだ。 余はそんな軟な男ではない』『それは重々承知しております』そうは言っても長年の感が騒ぎます。本当に何事もなければいいのですが……その後もまたアスビモの出入りが続きます。やはり気にはなってしまうため、お嬢様にゼド様へ忠告をしていただこうと思った矢先です。ゼド様から呼び出しがありました。急いで駆けつけると、そこにはなんとも禍々しく感じる1つの盾がありました。『セバスチャン、急に来てもらって悪いな。 この盾をたまたま貰ったのだが…… どう思う?』『どう思うと申されましても…… 嫌な雰囲気は感じますでしょうか。 ゼド様には相応しくないものとは思います』『そうだな。 余には相応しくないのは、わかっている。 でも、気になるのだ。 セバスチャン、もう少し見てもらえないか』『はっ。 ゼド様がそう仰るのなら』ゼド様に促されて、盾を触った瞬間……辺りが真っ暗になって、今の状態になってしまいました。今考えれば、あの盾が何かしらの力を発動させたということなのでしょう。それからかなり長い年月が経ったように思います。ずっと同じ
ジェナさんからアスビモの話を聞いて、俺たちは東方面へ向かうことになった。まずは出立前にいろいろと準備をしようと思い、街に必要な物資を買いに行くことにした。一応、王様も考えてくれているらしく、申し訳ない程度にはお金を定期的に届けてきてくれる。それはそれでありがたいのだが、やっぱりなかなかそれだけではやりくりが厳しい。ゾルダが剣に入って出てこなかったときに、ギルドを通じて依頼を受けてその分はあるが……生きていく以上、どこの世界でもお金は必要だ。場合によっては何かしら依頼を受けてお金を稼がないといけないかもしれない。そんなことを考えながら、必要な物資を買いそろえていった。いったのだが……なんで俺一人?あいつら、結局手伝ってくれないじゃん。出かけるときに『ここに欲しい物を書いておいたのじゃ。 あとはよろしく頼むのぅ』『マリーは今回は本当に疲れましたわ。 いつもならちゃんとお手伝いはしますが、今日だけはごめんなさい』とか言って、二人とも装備の中から出てこない。本当にいいように封印のことを使っている。なんか強制的に装備から引きずり出す方法はないのかな……都合のいい時だけ出てきてさ……ブツブツと独り言で文句が出てきてしまう。それでも一通り、旅の準備仕度も整ったので、宿屋に戻ることにした。クタクタになりながら部屋の扉を開けて中に入る。「ただいま。 やっと終わったよ」ふと見ると、二人とも姿を現していた。「おぬしも大変よのぅ。 ご苦労であった」そうゾルダが言ったが、それはねぎらいの言葉か?「あのさ、あれだけいろいろ頼んでおいて、それだけか? 他人事だな」「…… おぬしの必要なものもあったじゃろ? ついでじゃついで」何やら考え込んでいる様子のゾルダは、素っ気なくそう答えた。一方、マリーは「アグリ、ありがとうございます。 助かりますわ」丁寧にお辞儀をしてお礼を言ってくれた。マリーは魔族にしては礼儀正しいのかもしれない。それでも、何か気になるのか、さっとゾルダの方へ行ってしまった。「ゾルダ、どうした? 何か考え込んでいるようだけど……」ゾルダとマリーのいる近くへ近寄ってみると、そこには盾があった。そう、ジェナさんから貰った盾である。「その盾に何かあった?」「うむ。 何かしら魔力を感じるのじゃが……
ソフィアとマリーが復活したとの知らせを受けてから、思いのほか時間がたってしまった。早く戻ってくるように指示したはずのメフィストがようやく戻ってくるようだ。その間に封印した武器を探させているが、こちらも成果が出ていないようだ。どうやら封印した後、しばらくはこの城にあったようだが、その後は管理していなかったらしい。本当に杜撰というか脇が甘いと言うか……どこへ行ったかわからないとの報告だったため、叱責して方々を捜索するように指示した。いちいち余が命令しないと動けないのは困る。もう少し考えて動いて欲しいものだ。あとは倒せるかどうかは別として……ソフィア、マリーを倒すべく、付近にいる軍には通達をだした。そいつらからも連絡がないってことは、返り討ちにでもあっているのだろう。どいつもこいつも使えない奴らばかりだ。そんなことを考えていると、近衛兵の一人が玉座の間に入ってきた。「ゼド様、メフィスト様がお帰りになられました」「うむ、分かった。 こちらに連れてこい」近衛兵は部屋を出ていった。その後に黒のロングコートに黒スーツの出立のスラっとした男が入ってきた。こいつがメフィストだ。「ゼド様、お元気で何よりです。 緊急の知らせとのことでしたので、キリがいいところで戻ってきました」「メフィスト、ご苦労だった。 だが、遅い。 遅いぞ。 至急だと伝えたはずだ。 キリがいい悪いは関係ない。 余が帰ってこいっていたのだから、すぐに帰ってこい」あまりにも帰還が遅いので、叱責をする。メフィストは叱責を受けているにも関わらず、喜びを浮かべたような顔をする。「大変申し訳ございません、ゼド様。 この失態は、次の任務で必ずしや、挽回いたします」そう言いながらメフィストは膝をつき頭を下げる。「次はないぞ。 しかと心得よ」「ハッ」こいつも返事だけはいい。成果は出してくれるし、余の言うことは聞くのでそばに置いているが……もっと余が満足する成果を出して貰いたいものだ。「ところで、私を呼び出したのは、いかなるご用件でしょうか?」「お前、ソフィアは知っているか?」「はい。存じ上げています。 先代の魔王で、ゼド様が封印した奴です」「そのソフィアが復活したとの知らせを受けた。 マリーも一緒だ」「あのゼド様が綿密に練られた完璧な計画で封印を
竜天島から帰ってきた翌日。約束通りにジェナさんのところへ行った。メルナール一族の秘宝を取り戻したお礼に、アスビモの情報を貰うためだ。ただ昨日飲み過ぎたせいか、頭が若干痛い。それもこれもゾルダの所為だ。竜天島から帰ってきて早々にジェナさんへアスビモのことを迫ったゾルダ。それを逸らすために、酒を飲みに行こうと誘ったのが運の尽き。ゾルダに付き合って結構飲んでしまった……つられてしまって不甲斐ないというかなんというか……そのゾルダはと言うと……「さぁ、アスビモのことを聞きに行くのじゃ。 おぬしもさっさと歩け」と朝から元気そのものだ。最初の頃は飲むとゾルダの方が二日酔いになっていたが、最近はまったくそれがない。「あれだけ飲んで、大丈夫なのか、ゾルダは」「あれでも自重したのじゃ。 だからそれぐらいの量は大丈夫じゃと言っておったろうに」「二日酔いになっていたころが懐かしいよ……」かなり飲んでいるように見えたけど、それで自重したって言うんだから……どんだけ底なしなのか……「ねえさまは昔はもっとお飲みになっていましたわ。 だんだんと前の力を取り戻してきてらっしゃるのかもしれませんわ」マリーから言わせると、もっと飲んでいたということは……想像しただけでも寒気がする。「戦う方は昔の力を取り戻してもいいけど、飲む方はほどほどにしてほしいよ。 付き合う方の身になってほしい」「おぬしが無理に付き合う必要はないぞ。 ワシはワシのペースで飲むからのぅ」「ねえさまの好きにさせておけばいいんですよ。 マリーも付き合ってませんから、この通り、問題ないですわ」マリーは得意げに言うが、微妙に距離を置いていただけじゃん。酒場の他の客にゾルダが絡んでいった時も、知らん顔で……他の客に絡まないようにと思ってゾルダに付き合っていたのに。「それはゾルダが静かに飲んでくれればね…… 俺が相手しないと他の人に絡んでいったじゃんか」「そんなこともあったかのぅ。 酒の席はみんなで楽しく呑まんとのぅ」「頼むから見ず知らずの人とまで楽しくやろうとしないでくれ」「……け、検討はするのじゃ。 検討はな……」「それ、絶対に次もやらないパターンだから」魔族の元王に対して、人の道理を当てはめることが出来ないのは重々承知しているが……それでも人の社会に居る
ゾルダと自称するやつらを乗せた船が旅立ってから数日がたった。竜天島はほとんど人が寄り付かない島だ。それだけドラゴンが凶暴で人では太刀打ちできないからだ。そんなところに好き好んでいく奴はいない。もしあいつらがゾルダ率いる一行というのであれば……無傷とは言わないが、あたいの願い事はこなしてくれるだろう。時間はかかると思うが、あそこに住み着くドラゴンたちの数も減らしてくれるはず。そうなればこっちも襲われる頻度は少なくなる。今はどうなるかを待つってところかな。失敗したら失敗したでそれはそれだしな。お願いしたのはあの島へ行って秘宝を持ち帰ることだ。どっからどう見積もってもあと数日は帰らないだろう。その間、あたいはゆっくりと休ませてもらうよ。そんなことをギルド長室で一人で考えていたら、廊下からものすごい勢いでノックする音が聞こえた。『ドンドンドン』「ギ……ギルド長ー! ギルド長はいらっしゃいますかー」慌てふためいたギルド職員が、あたいの部屋に入ってくる。「なんだー けたたましいな。 何があったんだ」息を切らしたギルド職員は膝に手を当てながら、息を整えつつ言った。「ふ……船が……船が帰ってきました」「どこからの船だ? ここでは船の行き来も多いし、船が帰ってきたぐらいで慌てることもないだろう」「りゅ……竜天……竜天島へ行った船です!」「何?」流石にびっくりした。ただ予想した以上の早さで帰ってきたということは……あまり芳しくない結果だったのかな。元魔王だというから期待していたんだが、とんでもない食わせ者だったかな。「よし、船着き場へ向かう。 会って、直接確かめるぞ」職員にそう言い残して、商業ギルドを後にした。そして、船着き場へ向かった。船着き場へ着くと、竜天島へ向かっていた船はあと少しで着岸するというところだった。近くで着岸作業を見ていたあたいは、降りてくるゾルダ一行を見つけた。「おーい、お早いお帰りだな。 上手くいかなかったのか?」いち早く気が付いたのは男の方だった。「ジェナさん、お出迎えいただきありがとうございます」男は深々と頭を下げる。そこに割って入ってきたのは、自称ゾルダという女だった。「何を失敗した前提でお前は話をするのじゃ。 きちんとお前が望んだものを持って帰ってきているのじゃ」「
竜天島という島の奥地に来たワシたちじゃが……そこにいたオムニスとやらは、どうやら以前会っていたようじゃ。うーん……思い出せんのぅ。この場所とか島の風景はなんとなく覚えておるのじゃが……なんとかごまかそうと話をするのじゃが、すべて見透かされておる。ワシと相当会っておるのじゃろぅ。性格も何かも分かっておるという感じじゃのぅ。そうであれば、別に気にすことはないのかもしれん。忘れたものは忘れたのじゃ。思い出そうとしても思い出せんのだし、仕方がないってことじゃ。その様なことを考えておる最中に、あやつはオムニスとやらにここに来た事情を話し始めたのじゃ。「ラヒドに住むメルナール一族のお宝を以前にオムニスさんが持って行ってしまったらしく…… それを返していただけないかということで、ここまで来ました」「ああ、あの街から持ってきたものね。 いっぱいあるから、どのことだろうな」「いっぱいって……」「定期的に襲っているんだ。 だって、ドラゴンが理性のある魔物だと思われるのも厄介だし。 この島にも近づいて欲しくないから、恐ろしい魔物だということも分からせたいし」「はぁ……」「あっ、でも人にはあまり被害が及ばないようにしているよ。 そこは配慮している。 建物とか、殺す気で来ている奴らは別だけど」このオムニスとやらは、何気にいろいろと考えておるのぅ。歯向かう奴らには容赦はしないし、案外ワシと似ているところもあるのぅ。そこに親しみやすさを持っていたのかもしれん。その話にあやつは、若干苦笑いをしておる。「ほれ、おぬし。 あの……メル……ナールじゃったかな、狐耳の女。 あやつが渡したものを、オムニスとやらに見せたらどうじゃ」「あっ、そうだった。 あの、これらしいのですが……」あやつはそういうと、絵が描かれた一枚の紙を取り出した。オムニスとやらは、それを見て、「ああ、あれね。 確かに持ってきた、持ってきた。 たぶん、あそこのどこかにあるよ」後ろにキラキラした物が山積みされている場所を指して、そう言ったのじゃ。オムニスとやらで隠れていて見えていなかったのもあり、それを見てマリーは「あれ、全部あの街から持ってきたものですの?」とビックリしておった。「一部だよ、一部。 さっき、話しただろ。 ゾルダが光るものに封印されたっ